大好きなひと。
だいすきなひと。
先輩のコンサート、バックダンサーとしてステージに立つ。
わたしにとってのコンサートの一曲目は、君が出てくる曲だ。かっこよく踊る君。出てきただけで心が掴まれる。
君はいつも、自分のファンを探してる。
真剣にバックダンサーとして、主役のサポートとして、仕事を遂行しながら、その隙に、なんとかその隙をさがして、君は広い会場を見渡す。一瞬一瞬気付かないくらいに視線を会場全体に運ぶ。
君に見つかりますようにと、胸元に飾られる君の名前を探す。
あの日、自分のファンを見つけた君は、珍しく(ってわたしが思っただけで、普段からそうなのかもね)「あ、」って顔した。
自分のファンがそこにいる。
そう気づいたらもう、いつだって一直線だ。
立ち位置も振付も変えられない。だって先輩のバックダンサー。サポート役。
だけどその中でほんの少しでも、自分のファンに振り向きたくて、自分のファンの手を引きたくて、ファンサービスしたくて、またパフォーマンスに熱が入る。
そんな君を知ってる。
ファンサービスを出す隙をまた探して、自分らしいパフォーマンスを曲中に練りこんできたのはなんと歩いてるとき。フォーメーションの移動。歩いてる時に、アレンジのきいた動きをした。
踊りだけじゃなくて、振付の中でもなんとか隙を探して手を振ろうとする。そういう、そういうところが、キュンとしてたまらなかった。だいすき。例えば、そのファンサービスがわたしに向けられたものじゃなくっても、彼からファンに送る仕草は、いつだって見ていて、ときめいて仕方がなかった。お仕事に真剣に取り組んでその上で、やっぱりファンを見てくれるところが、もう、たまらなくうれしかった。
会いたい、って。
いっぱい思ってる。いつでも、いっぱい。
会いたい。
そう思ってたら、「会いたい」って、「会いに行きたい」って。そういう言葉を返してくれるひと。
彼の願望は、叶う時に出てくる言葉だ。
わたしは地方に住んでいる。普段、遠征を考えることも多い。会いに行く、ことが多い。
この春は、「会いに行きたい」って、その言葉のままに、彼の方からこの地方に会いに来てくれる。
会いたい、も大好き、も、全部ぜんぶ叶えてくれるひとだった。
きっとわたしはステージで踊ってる姿を見るだけで好き。
だけど、なのに、……その何より難しい、ステージに立ってその姿を見せてくれることを、叶えて、さらに、会いに来ることまで、叶えてくれる。
わたしの大好きなひとは、そんなひと。
いつかの虹、わたしまだ見たことがないんだ。だからきっとまたいつか、見てみたいな。
きっとずっと続く君の未来。
先輩と、仲間と、ステージが大好きで。そうやってステージでたまらなくうれしそうに笑う君を思い出したら、やっぱりワクワクと未来が楽しみで仕方なくなったよ。